« つわものどもが夢のあと。 | トップページ | 聖なる酔っ払い達 »

2008年11月 8日 (土)

ギネス礼賛

046_7

Guinness. あふれる爽快感、ギネス。今日はギネスビールの話をしよう。どうしても長くなるので、興味のない方はすっとばして下さいませ。

ギネスというと、すぐ頭に浮かぶのがギネスブックだが、その昔、ギネス社の人間がパブでどれが世界一かという雑談から生まれたのであって、大いに関係あるのだが、一般の人はギネスがビールとは、すぐには思いつかないだろう。

ギネスはアイルランドの黒ビールである。アイルランドといえば、日本と同じ島国で、ケルトと呼ばれる独特の文化を育んできた国だ。西の果てのアイルランドと、東の果ての日本だが、気風や物の感じ方には共通点も多く、伝統音楽なんかを聞いてみると、メロディやリズムのとりかたが日本の童謡や民謡と似ていて、どことなく懐かしくなってくるから不思議だ。ギネスはその昔、イギリスの港の荷物運びの人間(ポーター)が好んで飲んでいた、焙煎された麦で作る黒ビールのバージョンアップがその始まりとされる。

17251

時は1759年のアイルランド、大晦日、それまで10年間も売りに出されていた古いエールの醸造所を、34歳の若き業者が100ポンドで借りた。彼の名前はアーサー・ギネス。その時の契約はその物件を9000年(!)にわたって、毎年45ポンドの賃貸料を支払う、という誓約書にサインしたのだそうだ(武部 好伸氏 著:ウヰスキーはアイリッシュ より)。ということは西暦10759年まで賃貸契約が続くということになるが… 安いのか高いのかよく分からん。

アーサー・ギネスはその醸造所で最初は普通のエールを作っていたが、1770年代から前述のポーターも作り始めた。しかし彼はこのまま伝統的なダブリンエールを作り続けるか、ポーターにするか迷っていた。そして「よし、俺はポーターを作ろう。ただし今までにないポーターを作ろう!」と決心したらしい。その後、試行錯誤を繰り返したのち、今までにない新しい味わいの黒ビールを完成させた。

17941

ポーターにたっぷりのホップを加え、アルコール度数の高い、洗練された黒ビール。彼はそれを「スタウト」と名づけ売り出したのであった。それが「ギネス」の誕生である。現在ではアルコール度数をおさえ、窒素ガスを注入時に加えることにより、まったりとした泡が生まれた。そして最大の成功は、冷やした事である。そのため夏でもガンガンいけるスタウトになったのだ。

ギネスビールの原料は麦芽、ホップ、酵母、そして水だけ。添加物は一切使用していない純粋な「自然食品」だ。こう書くと、オーガニック大好き人間は買占めに走るであろう。フフフ。( ̄ー ̄)ニヤリ 低アルコールで、ビタミンもミネラルもたっぷりと含まれている、と書くと健康おたく婆さんたちが狂喜乱舞することは確実だ。

でも一番の魅力はやっぱ旨い!んですよ。地元アイルランドではギネスの他に「マーフィーズ」や「ビーミッシュ」というスタウトも出回っているが、圧倒的にギネスが強い。じつにアイルランド国内シェアの90%を占めており、まさに「国民酒」だ。日本でこれに似たものは沖縄の「オリオンビール」くらいしか見当たらない。

ウチのギネスビールはアイルランドに敬意を表して「ダブリン・ギネス」と名づけて販売している。樽ごと空冷の冷蔵庫で冷やしてあるが、ちょうど本場のパブが樽を地下の貯蔵庫で保管してるのと同じ理屈になるので、樽を外に置きっぱなしにしている他所の店なんかよりもずっとおいしいハズだ。そりゃぁ都心のパブで日に樽が何本も出る店よりか売り上げ自体は少ないかもしれないが、品質の管理にはより細心の注意をはらってる。そして何よりも情熱をかけて注いでいる。生樽だから缶やボトルより美味しいんだ、ということでは決してない。注ぎ手の熱意がこもって初めてパーフェクトパイントが出来るんだ。

045 なのでギネスは注ぎ方しだいで味も変わる、と思ってる。だいたい3回注ぎが基本なので、日本の居酒屋の「とりあえずビール」みたいに、ものの3秒で出てくるビールではない。急いで注ぐと泡がthin=薄い状態になる。 そうすると味までもが薄っぺらな味になってしまう。1回目はグラスの4分の3まで一気に注ぐ。そしてしばらく放置する。すると茶色の泡が激しく巻き起こりながら上面に向かって上りつめていく。これをサージング、という。しばらくすると黒と白のビールに分かれてピタッと止まる。そうすると2回目を今度は静かに真中から注ぎ入れる。1cm程だろうか?そしてまたしばらく放置する。その間に密度の濃い白い泡が固まっていく。そして最後の3回目でグラスの縁の上にまで、だが決してこぼれないよう、細心の注意を払って注いで完成である。

だからギネスを注文したら、少なくとも3分は待ってほしい。

こうしてできたダブリン・ギネスの泡は多少ゆらしてもビクともしない。硬貨をのせても落ちない位に肌理のこまかい泡がびっしりと下の黒い液体を覆っている。まるで生クリームのようだ。だから自分はギネスを敬遠するお客さんに「ギネスってまるでウインナーコーヒーのようなんですよ」と時々だまして飲ませてる。飲ませたもん勝ちじゃー!

え?泡の上のクローバーの事はって?

Dscf2254_4 実はクローバーではなく、アイルランドの国花、シャムロックを描いているのです。だから時々「え~四つ葉のクローバーじゃな~い」と言われるが、三つ葉が正解なのです。あの書き方は別に爪楊枝やフォークで描いているのではなく、三回目注ぎの時にグラスを回しながら一筆書きの要領で描いているのですよ。グラスを柔軟に回しつつ、注ぐほうも一定のスピードで注ぐときれいなシャムロックが描けます。これは馴れるしかありませんし、また生樽でしか出来ません。缶ギネスではちょっとむずかしいかも。

ギネスビールに限らず、自分は店では一番のビール注ぎの名人だと自負してるが、なんせキッチンにいる事が多く、中々思い通りにビールを注げない。でもほんの時たま、きまぐれにビールを注ぐ事がある。そんな時にあたったお客さんはラッキー!と思ってくださいネ。もう自分はビールだけ注いでりゃ良し、という仕事がしたいです。

最近、アイルランドでのギネスビールの消費量が減っていると聞く。それでも世界のビール飲み第四位なのだが… だから世界へバンバン進出していることも確かだ。そして今度は「ギネス コールド エキストラ」という新商品も販売するらしい。昔はやったアイスビールのように、ビールを一回凍らせて苦みや不純物を取り除いた、よりクリアな味わいのギネスにするつもりなのだろうか?料理におけるアクと一緒で、不純物とはいえ、旨みもそこにあるわけだから、あんまり取り除きすぎるのもギネス本来の良さが失われてしまうような気もする。アサヒやコロナじゃないんだから、どんどん冷やせ、どんどんキレを良くしろ、というのには反対だ。これじゃマイケルジャクソン氏も浮かばれないぜ?

゛Did you try Guinness?" アイルランドに行くと地元の人間からは決まってこう聞かれるそうだ。それほど彼らはギネスを愛し、誇りに思っている。そんなビールをいつまでも残しておきたいものだ。

Dscf2238 店の扉に打ち付けてあるこの飾りはアメリカで買ったものだが、〝ERIN GO BRAUGH″とケルト語で書いてある。店に来たアイルランド系に「何の意味?」と聞いたら全然分からなかった。苦労して調べたら「アイルランド 万歳!」だった。

ウチにぴったり。ヽ(´▽`)/

でもそれくらい読めろよ!自分の国の言葉だったら!

|

« つわものどもが夢のあと。 | トップページ | 聖なる酔っ払い達 »

ビール」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1087813/23580439

この記事へのトラックバック一覧です: ギネス礼賛:

« つわものどもが夢のあと。 | トップページ | 聖なる酔っ払い達 »