本日の宿泊先、舎爐夢(しゃろむ)ヒュッテ である。
ここ数年、スローフードから始まって、有機野菜や、エコ、オーガニックなどの言葉が世界中をぐるぐる回っていて、自分も否応なくそれらに巻き込まれていた。
料理をする立場の人間にとって、その世界は避けては通れなかったし、今年40才を迎えるにあたって、身体的にもそろそろガタが出始めていて、いわゆる健康にも気を使わければいけなくなり、自然と興味が湧いてきたのだと思う。
最近、急に養命酒を買って飲んでみたり(マズイ…)、CMを見て青汁のサンプル(結構イケル…)を試してみたりしている。でもそれはオーガニックぢゃない…か?
ウチの店名には冠に「田園酒場」が付いている。特に寺山修司のファン、という訳でなく、英国のCountry-pubをむりやり日本語にしただけなのだが、田園生活、というのにも憧れがあった。「セロ弾きのゴーシュ」の主人公のような、昼間は畑や菜園の仕事をして自給自足の生活を送り、夜は店で仲間と語り合いながら酒を飲む、という人生を送りたいと思って、現在も悪戦苦闘しているわけだが…
舎爐夢ヒュッテはそんな自分の馬鹿な思いとは裏腹にもう何年も「自給自足」「自然農」「持続可能な生活」を実践している所だ。シャロムとはヘブライ語でpeace、平和を意味するそうだ。ヒュッテはドイツ語で山小屋を意味する。だから「平和な山小屋」なんだ。このヒュッテ、という言葉をプチホテルと何かと勘違いしてしまって、ここを訪れた人も多いのではないだろうか?
たしかにガイドブックやHPなどを見ると「自然に囲まれたオーガニックペンション」だの「安曇野隋一のホテル稼働率を誇る」などと書いてあるものだから、期待で胸ワクワクしてしまう事は間違いない。自分もその内の一人だった事は否めない。仕事後にここのHPをぼんやり眺めながら、「ここには自分の考えていたことへのなんらかの回答があるはずだ」と思っていた。
駐車場に車を停めるとさっそくやぶ蚊の歓迎を受ける。かなりしつこい洗礼だ。まぁ、「自然の中のペンション」なのだから仕方ないか?
建物は若干古めの外装だが、その造りには好感が持てた。入口近くにはお手製の長いブランコがぶらさがっていて、早速子供たちが遊びだす。
作業靴が並んでいて少し雑然とした、凡そペンションらしくない玄関先から中に入ると大きな暖炉の部屋でしばらくぼ~っと待つ。気晴らしに本がいっぱいあるので何冊か手に取ると、シュタイナーの教育本とかはまだ良いけれど、インド哲学とか、サイババやら、アリババやら、うんたらかんたら宗教本とか、あっちむいて左系とか、ベジタリアン系とかで埋め尽くされていて、数頁めくったら眠気が急に襲ってきたので元に戻してしまう。建物は重厚な感じだが、落ち着く、という感じでもなく、ひと気もないので少し寂しい。何処かの家に無理やり連れてこられたような気持ちになって、どんよりとしてしまう。、「ここに二泊もするの…」と言いたげそうな嫁さんの視線も少し痛い。やはり二泊目は普通の旅館か国民宿舎の方が良かったかな…と少し後悔してしまった。
部屋に案内され(つーか鍵を持たされ)、中に入る。中は二間になっていて、ベッドが三つ、ロフトにさらに四つのベッドがあった。子供たちは嬉しがって上に登ろうとするが、梯子が急で危ない。注意書きにも「上にはあまり登らないように」とも書いてある。
こわごわ登ってみると、掃除をしていないのか埃だらけだった。蛾も死んでいたりして、あまり寝るには快適でなさそうだ。ただ天窓がついていて、星空を見ながら眠るには良いなと思った。ただその日はあいにくの雨模様だったのだが… ちょっと蒸し蒸しする。エアコンがあったので嬉しくてつけてみたらあまり冷房が効かない。まあ安曇野だし、夜はきっと涼しいから要らないだろうと、我慢することにした。
荷物を取りに駐車場に戻るとオーナーがいた。本やHPなどで顔を見ていたので挨拶をしようとしたら、いきなり「この車は貴方のかね?」と聞かれた。「ハイ、そうです」と答えると、「邪魔だからもうちょっと奥に入れなさい」と言われてしまった。おもわず、「はい?」と聞きなおしてしまった。「ここにラインがあるでしょう、ちゃんとここに入れないと邪魔でしょうがない」先ほど停めた時は地面がぬかるんでいて分からなかったのだが、良く見ると枕木の車止めらしきものがあったので、「ああ、すみません」と謝った。オーナーはぷいっと中へ入っていってしまった。車を停めなおして子供と外で遊んだが、実際、嫌な気持ちがぬぐえない。確かにちゃんと停めなかった自分が悪いのだが、もうちょっと言い方ってもんがあるだろうに…と思った。ここの親父は少し手ごわいぞと肝に銘じた。
その後、娘たちと辺りを散策する。コンボストイレだの、森のアースオーブンだのを見て回る。
ハンモックも吊るしてあったので乗ってみてしばしの極楽気分を味わっていると、娘がやって来て乗りたがった。仕方なく代わってやったら速攻落ちた。ぎゃはは!爆笑。
レストランの脇に、今回の大きな目的でもあった石窯が備え付けられてあった。
この石窯は三代目とかで、パンを焼く他、ホイロ代わりや、ピザやクッキーなども焼けるとの事で、この窯ではないのかもしれないが、部屋の内部をも暖められる機能があるとかで非常に興味があったのだが…生憎この日は窯は休みの日だった。
中を少し拝見させてもらう。今夜のディナーに使うのであろう、田舎風パンが焼製されていた。 かたわらに炭をいれるブリキのバケツがあった。
ここではこれを肥料としても使うのだ。この後、この部屋はスタッフによってドアのカギを閉められてしまった。一言ことわった方が良かったのか…(´・ω・`)ショボーン
やがて夕食の時間が近づいた。
森のオーガニックレストランは別棟に用意されてある。中にはいると木の温もりのある、綺麗なレストランだ。靴を脱いで上がる。中ではもう4~5組の先客がいてそれぞれ夕食を取っていた。

席に案内され、メニューを見てみる。地ビールとエビスビールがあって、両方頼む。
なんか普通の宿っぽい雰囲気になってしまった。席の真ん中にフォカッチャが置いてあって、子供たちが一斉にそれにむしゃぶりつく。あっという間に無くなってしまって、「もうパンないの?」とせっつかれる。パンでお腹いっぱいになっても困るので待たせる。
空のお皿が置いてあって、紙になんか書いてある。「もしお好みに合わない場合は、食べる前にこちらへ取り分けてください。私たちが食べます。食べ物を大事にしませう☮」みたいな事が書いてある。おあずけ皿だそうだ。
これには若干の驚きと戸惑いがあった。食べる前から味が分かるわけでもないし、そんなに食えないもんを出すのか?とも思った。エコ的には良いことなんだろうけどな~。
こりゃ一番の楽しみの食事さえもこころしてかからないといけないのか、と思うとビールが一層苦くなった。
本日のメニューは 前菜にラタトゥイユ、スープがインゲン豆の冷製ポタージュ、ご飯が大根葉の玄米ご飯、メインがそばの実のソーセージ、粒マスタードソース、そして玄米コーヒーとパウンドケーキだ。 そう、すべてベジタブル、野菜のみで作られているのだ。それではトゥッティのランチからしばらくぶりのマクロビオの至福のコースをいただきましょう。
つづく。
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