一日目。
いろいろ考えながらも、昼過ぎにカナディアンファームに着く。

自分の気持ちを表しているかのような、曇天の空だ。
意を決してファームに向かう。
車を停めて外に出たら、ハセヤン以下、2人の男性スタッフが屋外のキッチン跡地で何やら作業中だった。
「コンチワ~」とちょっとおどおどしながら声をかける。
一瞬、いぶかしげな顔をしたハセヤンだったが、直ぐに自分だと分かったらしく、
「おーい、スペイン料理屋!来たか!」と出迎えてくれる。(いや、特にスペイン料理屋じゃないんですが…)と思ったが、まぁ、良いや。
「すみません、来ちゃいました~」
と、自分でも嫌になる程のへりくだった感で応える。
「植村です。よろしくお願いします」
と、他のスタッフに挨拶をする。
男性スタッフは自分とほぼ同年代で、ファームのブログも担当している、ややアクの強そうな松本君と、30代の純朴そうな好青年の岩村君という、対象的な2人。案外普通に挨拶を返してくれたのでホッとする。よしよし、第一関門突破。
この日は偶然にもハセヤン58才の誕生日でもあった。

以前に修繕していた屋根葺きはもう終了し、今はその下のキッチンの修繕に取りかかっていた。
沼津から買ってきた日本酒と干物をお土産に渡す。
「飯食いましょう」
とハセヤンの誘い。いや、まだ仕事もしてないのに、そんな。と思ったが、誘われるまま、昼食をご馳走になる。後で感じた事だが、ハセヤンは「飯を一緒に喰う」事を重要視しているようだ。確かにどんな時でも、どんな飯でも、同じ釜の飯を食うって事は、自分の店でも大事にしている。
一階のストーブのある部屋に入り、シーフード?のカレーと、味噌汁をご馳走になる。他の女性スタッフも居た為か、やや緊張して喉に通らず。
メールをやり取りしていた越中谷さんとも顔をあわせる。
なかなか素直に輪に溶け込めず、やや苦労するが、そんな事お構いなしに昼食後、ハセヤンは仕事を与える。
二階に続く階段の手すりを外し、新しく作り変えるのを自分に任せる。

ファームはおよそ3000坪の広大な敷地だ。敷地内を小川が流れ、白樺や松などの雑木林の中にレストラン、屋外キッチン、客席、母屋、燻製小屋、工房、宿泊施設、鶏小屋など、様々な施設が点在していろ。ハセヤンは自分を連れて工房に入り、チェーンソーや、鉄の加工器具、その他いろいろな機械を愛情たっぷりに説明してくれる。
アメリカから買ってきた新品のチェーンソーを格安で譲ろうかと言われたのだが、自分は断ってしまった。御殿場じゃ自由に切れる木なんて無いし、今後の人生でチェーンソー買ってまで使う事ってあるのか?と思ったからだ。ハセヤンはちょっと残念そうだった。きっと料理人が自前の包丁を買わないのと同じだからだろう。
階段の手すりを何とか外し、の掛けのロープ縛りでひっぱり、ユンボで持っていく。
ツリーハウスの所で下ろし、一本の赤松を見定める。

チェーンソーで無造作に切り始める。

ハセヤンのチェーンソーさばきは有名なんだそうだ。どんな場合でもチェーンソー一つでやってしまう。そんな光景をその後、何度も目にする事になる。
生で見る木の切り倒しはホント、無造作。他の木にぶち当たって地面まで落ちてこない。
でもそんな事お構いなしに木を切り倒し、枝を落とし、ユンボで引っ張り、自分に皮剥きをしろという。
ホイきた、やりますよと息混んだのは良かったが、
これが結構キツイとは知らなかった。

ハセヤンお手製のブーメラン?ピーラーで外側皮を穿いていく。上手くいくとそれこそカンナの様に皮が剥がれるが、時折深く刃が入ってしまって内側の生木まで削ってしまう。
ピールで剥く、なんて言うから冗談で
「料理と一緒っすね(^_−)−☆」なんてのたまいてたら、
料理の域を遥かに超えていた。
でかい木なので、裏も削ろうと思ってもなかなか動いてくれない。他のスタッフの手助けは無し。独り格闘する。辺りは段々暗くなり、寒さが忍び寄ってくる。
ハセヤンは横に積まれた材木を指し、「それが片付いたらこっちもやっといてー」なんて言ったが、
他の木になんか全然回らない、回らない。
これが製材所ならば、ものの5分で剥ける作業なんだろうに、これがハウスメイドって事なのか?
結局二時間ほど掛かって足もヘロヘロ、腕もへろへろ、気持ちもヘロヘロになった。
それでもなんとか、削り終えてその日の仕事は終わった。

写真 ファームブログより拝借
後でハセヤンから聞いた所によると、アメリカでは皮むきが一本3000円位になるそうで、
一日に4〜5本は剥いたらしい。自分は1本しか出来なかった。3000円にしかならない計算だ。あ~ぁ。(T ^ T)
さ~、夜だ。夜は任せてくれ!

夜はハセヤンの誕生日会も兼ねての宴会。近くの農業大学の先生2人もお客さんで見えられた。夕食はちらし寿司と沖縄のお麩の汁、バースデーケーキが出た。労働した所為もあり、お代わりして食べた。
ハセヤンがアメリカから持ってきたオーガニックワインを出してくれ、自分も持っていったギネスを皆で喜んで飲み、だんだん自分も調子に乗りはじめ、飼育やその他いろいろな話で盛り上がった。
差し入れの白州ウイスキーはあっという間に空になり、先生方が作った八ヶ岳のトマトを使ったトマトジュースをビール割にしたら絶品で、こりゃ~お土産に買うしかない!と決めた。
人里離れた森の奥で、辺りにはコンビニや居酒屋なんて一軒も無い。だからある物を食べ、飲むしかないのだけど、薪ストーブのある部屋はポカポカしてて、明るすぎない照明で、音楽もないけど話は盛り上がり、楽しかった。自分は特に普通なら仕事している時間帯にこんなゆったりして飲んでいるのも楽しかったんだろうな。
お天道様が出ている内は働いて、夜は気のあった仲間と飲む。そんな生活を夢見ていた自分にとって、
一瞬ここは天国か?と思ってた矢先、越中谷さんに
「植村さんはウチに人生の夏休みに来たんですもんね~( ̄▽ ̄)」
と言われてしまった。ヽ(;▽;)ノ
イエイエ、修行ですぅぅぅ…
9時過ぎに(早っ!)解散し、自分の寝る部屋を案内され、ストーブや電源があることに深く感謝した。
明日は何が待っているのだろう。
つづく。
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