朝方、目が覚める。
さ、寒い。
寒くて目が覚めてしまった。湯たんぽが布団の中ですっかり冷え切ってしまっている。時計を見たらまだ3時半じゃないか!

部屋のガスストーブを点けなおす。
さすがは文明の利器、すぐに暖かくなり、感謝しながら又ウトウトとする。
6時頃、うっすらと夜が明けてきて、ファームでの最初の朝がやって来た。

外に出て、昨日忘れた自宅へ電話をかけてみる、が繋がらない。思いっきり圏外だ。使えねぇな、ソフトバンク。

山羊がメイ~と鳴いていた。
道に突っ立って寒くてガタガタ震えていると、一台の車がやって来たので、何?朝早くから、と見ていると車はハセヤンと居候の太郎君だった。
そう言えば昨夜太郎君が明日朝から魚市場に行くと言っていたな。
一体何を買ってきたのだろう?甲府の魚市場で?山ん中で?
車を覗き込むとトロ箱が五つ入っていた。下ろすのを手伝う。

鮭だ。アトランティックサーモンだろうか?
その他にブリ、紋甲イカ、甘エビ、カレイが入っていた。
「おーぃ、寿司屋のせがれ」
朝食用にカレイの煮付けを手早く作りながら、突然ハセヤンが言う。今度は寿司屋かよ。(^_^;)
「今日のお昼は寿司にしよーか」
「ほーい、分かりました」
答える。
その為にわざわざブリやら甘エビやら買ってきたんだ、作るしかないわな。
が、しかしその前に一仕事だ。
買ってきたサーモンをさばいて塩漬けにしなきゃならない。スタッフ皆での作業だ。自分は鱗を取って、頭を落とす係りになった。

「何か音楽はないか?」
ハセヤンが言う。
iPhoneを渡して音楽をかける。
The Clashの"Clampdown" がいきなりかかってしまい、合うんだか、合わないんだかよく分からない状態で仕事が始まった。
鮭の鱗を取る。ヌメヌメがなかなか取れなくて苦労する。頭を落としたらハセヤンに渡す。ハセヤンは尻尾から一刀両断でスパッと三枚におろす。一回自分が頭の方から落としてみたら失敗した。
他のスタッフは身についている中骨を丁寧に骨抜きで一本一本抜いて行く。こちらも大変そうだ。
残った頭や中骨は出汁用に取って置き、スープや煮込みに使う。アラは先ず犬のエサになり、その後はニワトリのエサになり、最終的に肥料にする、という徹底した活用法だ。だからファームでは全く無駄が出ないんだそうだ。
切って並べた鮭に塩と胡椒、黒砂糖を混ぜ合わせた秘伝?のスパイスを一枚一枚丁寧にハセヤンは振りかけていく。
小さい塊があると見逃さずにそれを取り除く。鮭の身にまんべんなく、均一にサラサラとスパイスを振りかける。
その後はビニール袋に水を入れた重しをして、デカイ冷蔵庫で一週間ほど塩漬けにするんだそうだ。
自分は残念でたまらなかった。塩漬けの場面しか見れなかったからだ。この後のスモークをぜひ勉強したかった。ファームが近くに在れば、と痛感した。
昼は約束通りに寿司を作った。自家製の玄米を七分づきにした、少し赤目色のシャリになった。

皆、ムシャムシャと平らげてくれた。
その日の夜はさすがに体が魚臭いので、太郎君と一緒に温泉に出かけて、無駄に混浴
に入ってきた。良い湯だった。

ファームから帰ってきてから、復習のつもりで自分なりにスモークサーモンを作って見ることにした。

20度以上にならない様注意しながら…

サクラのチップで12時間燻す。

ハセヤンのスモークには程遠いかもしれないが、彼のイメージの片鱗だけでも伝えられると思う。
つづく。
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